渡辺弘明さん|工業デザインとリフレーミング

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今日のブログは大学の授業についてのブログです。これからも毎週多彩な講師の方に来ていただく、大学院特別講義[リフレーミング]の授業を聞いてのメモや、自分の感想などを書いていきます。

第2回目の先生は、渡辺弘明さん。

渡辺弘明 WATANABE Hiroaki

1984年、桑沢デザイン研究所リビングデザイン研究科卒、リコー入社。のちにfrogdesign、ziba DESIGNを経て、1995年、プレーン設立。 PC、通信機器、家電、AV機器等コンシューマー機器から、医療機器、試験器に至るさまざまなメーカーのプロダクトデザインを手がける。 グッドデザイン賞審査委員。

WATANABE Hiroaki

制約がもたらすものがある

岩谷産業さんのカセットコンロのデザインのお話をしていただきました。 「アモルフォ プレミアム」というカセットコンロ。

要望は、「19年間使い続けてきたコンロをあたらしくしたい。」
岩谷産業の目玉の商品にしたい。」「でも前までの製品の、イメージは踏襲してほしい。」

渡辺さんが考えたのは真四角のコンロ。
鋼板で箱をつくるように考えていたけど、問題が起きる。

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「どうしようか」と考えていた時に、このカセットコンロの特徴のひとつである「四隅までつながる五徳」のアイデアが生まれる。

iwatani アモルフォ プレミアム

ここで渡辺さんが仰っていたのは、 「制約自体があたらしいものを生み出すことがある。」ということ。

  • ただ物を考えているときはほとんど何も考えていなくて、制約があるから全く違うアイデアが出てくる。
  • 何気なく描いているスケッチは殆どフレームのなか。それはリフレーミングじゃない。
  • 考えて描くといままで考えたことのないデザインになる。

逆に

「椅子のデザインをお願いします。無制限、良い物ができたらお持ちください。」

と、制約なしの依頼には、「19年、提案できず」
世の中には素晴らしい椅子がいっぱいあって、新しいものをデザインする意味があるか? 何を解決するのか? 自分が新しくデザインする意味は?

話を聞いているなかで、「制約の中で、リフレーミングする」というワードが浮かんできて、なんかしっくりきてよかった(至極当たり前かもしれないけど)。

デザイナーのみによるものづくりは可能か?

デザインは製品づくりのほぼ全工程に関わっています。では、デザイナーのみによるものづくりは可能でしょうか?

「◯◯のデザインお願いします。好きにやってください。」なんてありえない。
でも、

依頼主:私
デザイナー:私

こうして出来たのが、『テープディスペンサー eN

ミニマライフ テープディスペンサーeN EN01 ホワイト

ミニマライフ テープディスペンサーeN EN01 ホワイト

おなじみのテープディスペンサーは、

こういった「テープをリールに嵌め込みホルダーの軸を回転させる」もの。
eNでは回転支軸を無くし、テープそのものを本体に挟み込む。「テープカッターっていうのはこういうものだ」という考え方をリフレーミング

つまり、 既成概念をいかに打破するか。 あたりまえと思った瞬間に思考は停止する。

今までのものを排除してそこからデザインする。

ステーキナイフ「アシンメトリー」

次に、ステーキナイフ「アシンメトリー」の紹介。

「フレンチの国際料理コンテストがあるので、ステーキナイフをデザインして欲しい」という依頼から、「ナイフは右利きが左利きない。右手で持って美しいかたち」「マナーをデザインする」と考え制作したそうです。

さらに、シェフからは「肉の組織を壊すこと無く、往復しないで切れる」こと、かつ「ソースをなめることが出来るように舌は切れないように」という制約。

一目見ていろいろ浮かんでくる。まず、そのステーキナイフの美しさ、繊細さ、そして不思議なかたち(名前通りアシンメトリー)。そして「この模様は何なんだろう?」。

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この波紋模様は、「鋼同士を組み合わせた70層のダマスカス鋼を弊社独自の技法で鍛え、砥ぎ上げることにより、最高の切れ味とこれまでにない斬新で美しい波紋模様が刀身全面に浮かび上がったもの」なんだそうです。

美を目的とせず、結果美しい。

まとめ

渡辺さんはキーワードを残すのがとても上手な方だ! と感じました。話を聞いていて「ピーン!」とくる言葉をたくさん残して下さいました。

  • 「制約の中で、リフレーミングする」
  • 「すべてを当たり前と思わず、既成概念を打破する」
  • 「すぐにデザインしない、意味を探求する。」
  • 「美を目的とせず、美しさは結果。」

ちなみに:千利休について

渡辺さんは、「好きなデザイナーは?」と聞かれたら、ちょっとカッコつけて「千利休」と答えているそうです。(カッコイイ)

利休のデザインは、利休箸、利休下駄、現代まで名の残っているすぐ浮かぶものでもすべて、不要なものをそいでいる。茶室にかけた具体的な絵がない掛け軸に、「あなたがイメージをふくらませてくれ」という意味を込めるような、利休は空間のデザイナーであった。

小説や映画で、「なんとなくこんなすごい人」というイメージだった自分を恥じます、もっと利休について知りたくなってきました。本、読んでみよう。